5月30日
朝7時半頃ホテルのレストランに降りたが、誰もいない。どうもまだ皆寝ているようだ。 トランクを玄関に置いてまた部屋に上がると、奥さんが起きてきた。 どうしたら、ここまでお腹が大きくなるのだろう?重そうな身体を抱え、痛そうに足を 引きずって歩いている。 「オレンジジュースを飲む?特別よ!」と、搾りたてのオレンジジュースを絞ってくれた。 カフェオレと搾りたてオレンジジュースとパンが通常の朝食。一人3・5ユーロ。 眠そうにあくびをしながら息子さんが起きてきた。 そういえば、子供達と奥さんが帰ってきたのは、11時近くだったけ?それから夕食が 始まっていた。 私達は、wifiが部屋では繋がらないので、結局、11時過ぎまで下のレストランで食事を したままインターネット。ちなみに、お客は私達のみ。 朝食を済ませて外に出ると、もう7時半過ぎだというのに、ひっそりと静まりかえっている。 前のコンクリートの厚い壁の中から、微かにミサの聖歌隊の歌声が聞こえてくる。 昨夜は、夜の7時から始まったミサに参加した。ここの修道院には、グレゴリア・チャント の素晴らしい聖歌隊がある。 若い修道士から、歩くのも困難そうな老人神父まで約20名の修道士が歌っている。 神父様も元は聖歌隊のソリスト?と思える程、フレーズに、透き通った素晴らしい声の言葉 が入る。 彼等は、ミサがおわると、また、高い鉄の門の内側に入って行き、外部とは全く遮断された 世界の中での時間を過ごす。 あの回廊から見える四角の空のみが外部の世界という、私達とは別次元のある意味、非現実的 な毎日があるのだという。 「もう、充分堪能したから、このまま帰ってもいいよ。」という満足気な顔の相棒と共に、 今日はいよいよピレネー山脈の麓までという約500キロ走る事になる。 国道からの入り口に石の上に立つ像が目に入り向かった。 Maria像の横にこの時期卵をかえしているのだろう、コウノトリの巣を見つけた。 小さな町(Anita dyer)なのだが、なかなか独創的な小さな町だった。 私達はsorisを抜けN122をこZaragozaに向かって入った。 どこまでも続く大地。広いな~大きいな~。あまりのスケールの大きさに絶句である。 山の峰から平原に渡るまで、風力発電が限りなく続く。 今日は、ピレネー山脈の麓のboi渓谷まで約500km走る予定である。 走れども走れども続く平原。昔昔始めてスペインを訪れた時、緑もなく、褐色の大地 のみだった記憶があるのだが、その時は秋だったせいだろうか?いや、それだけでなく、 その後牧草地に変え、木々を植え、人の力、努力があってこそ、ここまで綺麗な草原に なっているのだと思った。 約10世紀前、イスラムがこのスペインに南から入り、勢力を広めてきた時代がある。 その頃、沢山のロマネスク建築や教会は壊された。その手がかからなかったピレネー 山脈の奥地に今もなお素晴らしいロマネスク建築が残っているのは、その為である。 昨日のシロスもあの自然が作り出した城砦のお陰で残ったのだろう。 日本の大地がどんなに肥沃な土地なのか改めて思った。ここには、猿も猪も熊もいない。 唯一野生のシカがいるだけだろう。 水もなく、これだけ乾いた大地には、動物さえも住めなかったに違いない。 地図に川の表示があるものの、あるのは、小さな小川だけである。それでもその小川の 両側には樹木が育ち、谷間には本当に小さな森を形成している。 殆どが岩盤で成り立っているのだから、仕方がない。 そんな中に所々小さな村がまるでお互い寄り添って生きているように存在している。 そして、そんな中、何よりもびっくりしたのは、風力発電の風車の数の多さである。 3年前に見たよりももっと増えてきているように感じた。 ひとり興奮して車から写真を撮る。停まろうにも車のスピードが速すぎ、なかなか ポイントがない。 凄い!凄いぞ〜!!現在原発はスペインでは8基あり、エネルギーの20%を原発。 風力はそれ以上を賄っている。今、世界で第2〜3位なのではないだろうか? (ただ、いろいろスペインでも問題がありそうだが..)この広大な大地なら、風力の 被害はあまりなさそうである。 そんな乾いた町を走っている時、ふと、不思議な景色を発見した。 斜面に沿って入口があり、土の上に何とも簡素な空気抜きのような煙突が出ているのだ。 私達は、車を降りて写真を撮った。 Borjaという地名。これは、一体何の為のものだろうか?一見すると貯蔵庫のようにみえる のだが、それにしてはそれぞれが手作りながらもこだわって作っているように見えた。 昔の洞窟住居の名残りなのだろうか?共同水汲み場らしきものもある。 これもこの地方の生活の工夫なのだろう。 この頃の人達は、きっとその地方の気候に沿った生き方、暮らし方をしてきたのだろう。 その工夫のひとつがこれ。いつから私達は北から南まで、どんな場所でも同じ環境での生活を 望み始めたのだろう? 遠くに見える丘には沢山の風力が列を成して建っているのが見えた。 そんな寄り道をしているものだから、 目的地のboi渓谷に着いたのは、夕方に入ってからだった。 さすがに、ピレネー山脈近くなると今までの風景が一変し、川も森も豊かになってきた。 確かに、ここも先日のシロス以上に大きく聳え立つ岩岩。これ以上の城砦はないだろう。 boi渓谷の看板を目安に入っていくと、それまでの厳しい風景から、とても優しい風景のなかに 入って行った。 柔らかく人も植物も動物をも受け容れてくれる自然を。Informationを見つけた。 以外にも賑わっている。 親切な男性から、沢山の資料、ホテルの資料ももらった。 ここの渓谷の中には、車は(タクシーのみ入れる)入れない国立公園がある事。 どうやら、殆どの観光客はこの公園を歩くらしい。 また、ロマネスクの教会も各村に点在し、その概要がきちんとパンフレットにまとめられている。 私達は、取り急ぎ、再度日がさした頃合いで山の上の教会に向かった。 相棒と大きな歓声を上げた。なんとも美しいシルエットだろう。 ロマネスク特有のバックシャンである。モチーフもなかなか凝ったものだ。 この村には、もう一つ教会がある。思いはこの村に泊まろうと思っていたのだが、どうやら、 この時期、3つ星のいかにも高そうなホテル以外空いていなかった。 その下の村も同様である。結局、Informationのあるきっとこの辺りで一番賑やからしき町の ホステルに泊まることにした。 道路を隔て、斜めまえにロマネスク教会が見える。その教会は夜半過ぎから降り始めた雨の中に、 ライトアップされ、寝るまでの間、私達を楽しませてくれた。
by necowash
| 2011-06-14 11:00
| スペイン、ピレネー山脈探訪
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